山形地方裁判所新庄支部 事件番号不詳 判決
主文
被告人小国弥三郎を懲役八月に、被告人星藤一を懲役六月に、被告人斎藤斌を懲役二月に各処する。
ただし、被告人等に対し本裁判確定の日から各二年間右刑の執行を猶予する。被告人星藤一より金五万八千百四十七円を追徴する。
訴訟費用中証人〓渡房蔵、同佐藤政蔵、同野崎一郎、同長南金蔵、同高橋広吉、同栗田敬治に支給した分は被告人小国弥三郎、証人浜田源蔵、同安孫子雄吉、同小方〓蔵、同梅木治作、同太田五蔵に支給した分は被告人星藤一の各負担とし、証人高瀬七郎、同井上益雄、同佐々木栄吉に支給した分はこれを二分し、その一を被告人星藤一の負担とし、その余を被告人斎藤斌の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人小国弥三郎は、最上家畜商業協同組合の設立発起人で昭和三十二年八月二十三日同組合設立と同時にその理事となり昭和三十三年五月二十五日代表理事組合長となり、以来その組合員に対する資金の貸付その他同組合に属する一切の事務を掌理しているもの、被告人星藤一は昭和三十年五月十六日から山形県農林部畜産課に勤務し、昭和三十三年二月十二日まで家畜商免許登録事務係主任、家畜取引事務係副主任として家畜商業協同組合の設立および家畜市場開設許可に関する事務を処理する職務に従事し、昭和三十三年二月十三日山形県東南置賜地方事務所に転勤し、以来同所において農林課農政畜産係として(旧)有畜農家創設特別措置法による導入家畜の評価員をも兼ね、導入家畜の評価およびその管内家畜商の指導等の職務に従事していたもの、被告人斎藤斌は家畜商を営んでいたものなるところ、
第一、被告人小国弥三郎は被告人星藤一に対し
(一) 昭和三十二年五月四日山形市小姓町七十七番地料理店「花よし」において、前記組合の発起人としてその設立許可を得るため、またその設立後において家畜市場開設許可を得るため特別有利なる取扱いをして貰いたい旨依頼し、その報酬とする趣旨のもとに現金一万円を供与し、かつ千円相当の酒食の饗応をなし、
(二) 同日同市七日町花小路所在の被告人星藤一知合の某料理店において、前同様の依頼趣旨のもとに約四千円相当の酒食の饗応をなし、
(三) 同年七月一日新庄市金沢所在最上郡畜産農業協同組合連合会事務所において、前同様の趣旨のもとに乾ぜんまい一貫匁価額金二千円相当を供与し、
(四) 同日同市金沢百二十九番地の十二、日の出旅館において坂本末吉と共謀し、前同様の依頼趣旨のもとに金千四百七十円に相当する酒食および宿泊の饗応接待をなし、
(五) 同年十月十三日最上郡舟形町舟形三百六十三番地の三猿羽根屋旅館において、右組合が家畜市場開設の許可を得るため特別有利なる取扱いをせられたき旨依頼し、その報酬とする趣旨のもとに金千九百二十円相当の酒食の饗応をなし、
(六) 同月十三日より同月十五日までの間新庄市金沢千六番地旅館新盛館において、前同様の依頼趣旨のもとに金三千百五十七円に相当する酒食および宿泊の饗応接待をなすと共に現金一万円を供与し、
(七) 同月十五日最上郡舟形町奥羽本線舟形駅において、前同様の趣旨のもとに冷凍鮎五百匁価額六百円相当を供与し、
以て地方公務員たる被告人星藤一の職務に関し贈賄し、
第二、被告人斎藤斌は
昭和三十五年三月十七日頃米沢市御廟町千七百八十七番地被告人星藤一方において、同人に対しさきに同人のとりはからいで自己の二頭の乳牛がその資格がないのに当時施行の有畜農家創設特別措置法による導入牛として評価を得たのでこれが謝礼と今後同様特別有利なる取扱いを受けることの報酬とする趣旨のもとに現金二万円を供与し、もつて地方公務員たる同人に対しその職務に関し贈賄し、
第三、被告人星藤一は
(一) 前記第一の(一)記載の日時場所において、被告人小国弥三郎より同記載の趣旨のもとに饗応供与されるものであることを知りながら金千円相当の酒食の饗応を受けると共に現金一万円の交付を受け、
(二) 前記第一の(二)記載の日時場所において前同人より同記載趣旨のもとに饗応されるものであることを知りながら金四千円に相当する酒食の饗応を受け、
(三) 前記第一の(三)記載の日時場所において、前同人より同記載趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら乾ぜんまい一貫匁価額二千円相当の交付を受け、
(四) 前記第一の(四)記載の日時場所において、前同人および坂本末吉より同記載の依頼を受けた上同記載の趣旨のもとに饗応接待されるものであることを知りながら金千四百七十円に相当する酒食および宿泊の饗応接待を受け、
(五) 前記第一の(五)記載の日時場所において右小国弥三郎より同記載の依頼を受け、同記載の趣旨のもとに饗応されるものであることを知りながら金千九百二十円に相当する酒食の饗応を受け、
(六) 前記第一の(六)記載の日時場所において、前同人より同記載の依頼を受け、同記載の趣旨のもとに饗応供与等されるものであることを知りながら金三千百五十七円に相当する飲食宿泊等の饗応接待を受けると共に現金一万円の交付を受け、
(七) 前記第一の(七)記載の日時場所において、前同人より同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら冷凍鮎五百匁価額金六百円相当の交付を受け、
(八) 昭和三十四年十月四日米沢市御廟町千七百八十七番地の自宅において、家畜商浜田源蔵より同人のため前記有畜農家創設特別措置法による導入牛の評価等につき、特別有利な取扱いをなすことの報酬として供与するものであることを知りながら現金二千円の交付を受け、
(九) 昭和三十五年三月九日頃、東置賜郡宮内町大字萩から同町大字小滝に向い進行中の乗合自動車内において、前同人より前記同様の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら現金二千円の交付を受け、
(一〇) 前記第二記載の日時場所において、被告人斎藤斌より同記載の依頼を受け、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら現金二万円の交付を受け、
もつていずれも公務員たる自己の職務に関し賄賂を収受し、
第四、被告人小国弥三郎は
前記組合長に就任後の昭和三十四年一月十六日秋田県湯沢市において、組合員野崎一郎、同佐藤政蔵等より同組合の規約によらない融資の申込を受け、右両名が従来の融資に対して未だ完済できずその申込に応じて融資するにおいては回収不能におちいる虞があり、組合に損害の及ぶことを認識していたにもかかわらず、敢えてその任務に背き右両名の利益をはかる目的を以て同人等に対しその規約によらず各十万円宛の貸付をなし、よつてこれが回収を不能ならしめ同組合に金二十万円の財産上の損害を与え
たものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
被告人小国弥三郎の判示所為中判示第一の(一)乃至(七)の点は各刑法第百九十八条第一項、罰金等臨時措置法第二条第三条に、判示第四の背任の点は刑法第二百四十七条罰金等臨時措置法第二条第三条に該当するので所定刑中各懲役刑を選択し、以上各罪は刑法第四十五条前段の併合罪の関係にたつので同法第四十七条第十条によりもつとも重い判示第四の背任の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役八月に処し、
被告人星藤一の判示所為はいずれも刑法第百九十七条第一項前段に該当するところ、以上各罪は刑法第四十五条前段の併合罪の関係にたつので同法第四十七条第十条により犯情においてもつとも重いと認められる判示第三の(一〇)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役六月に処し、
被告人斎藤斌の判示所為は刑法第百九十八条第一項罰金等臨時措置法第二条第三条に該当するので所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期範囲内において同被告人を懲役二月に処し、
ただし、諸般の情状に鑑み、被告人等に対し刑法第二十五条第一項を適用しこの判決確定の日から各二年間右刑の執行を猶予し、
被告人星藤一の収受した賄賂はこれを没収することができないので刑法第百九十七条の五によりその価額金五万八千百四十七円を同被告人より追徴し、
訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項により証人樋渡房蔵、同佐藤政蔵、同野崎一郎、同長南金蔵、同高橋広吉、同栗田敬治に支給した分は被告人小国弥三郎、証人浜田源蔵、同安孫子雄吉、同小方〓蔵、同梅木治作、同太田五蔵に支給した分は被告人星藤一の各負担とし、証人高瀬七郎、同井上益雄、同佐々木栄吉に支給した分はこれを二分してその一を被告人星藤一、その余は被告人斎藤斌の負担とする。
よつて主文のとおり判決する。
(昭和三八年六月二九日 山形地方裁判所新庄支部)